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2023.12.12
「中小企業でDX推進はどこまで進めればいいでしょうか?」
「すでにシステムをいくつか導入していますが、いっこうに社内に浸透しません。」
経営層の悩みを聞いていると、どの企業もこのようなお悩みがあるように感じます。これからの時代、少子高齢化、人手不足、外国人雇用、都心部への人口流出により、会社経営が行き詰ることは容易に想像できます。そのためDXは大企業だけでなく、むしろ中小企業に必要な取り組みです。
そこで、この記事では以下の内容を解説していきます。
DXの進め方がわからないとお悩みの方だけでなく、これからDXを進めようと考えている方にも読んでもらいたい内容になっています。ぜひこの記事を参考にしてください。
DXは単純に言えば、新しいテクノロジーを導入して、それを使ってビジネスを効率的に運営し、競争力を強化することを指します。例えば、オンライン販売の導入、バックオフィス業務のシステム化、デジタルマーケティング戦略の採用などが含まれます。
なぜDXの取り組みが重要なのかというと、現代のビジネス環境は急速に変化しているからです。おそらく、自社製品やサービスが顧客にどのように提供され、どのように購入されるかも、数年前とは大きく変わっていることでしょう。
DXにより例えば次のようなメリットが期待できます。
このように、中小企業にとっても、将来にわたって成功し続けるために欠かせない取り組みです。
DXのようなデジタルに対する取り組みは、大企業から徐々に広まる傾向にあります。実際に情報処理推進機構が公開している「DX白書2021」によると、全社または一部でDXに取り組んでいる企業は、従業員数300人以下で28.8%、301人以上1,000人以下で51.8%、1,001人以上で69.7%という状況です。さらに総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負報告書」によると、地方圏の企業と東京都に本社を置く企業でDXに取り組み始めている企業は地方圏の2倍以上です。
※引用:デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負報告書|総務省
従業員数の多い企業ほど、都心部に近い企業ほど、DXに取り組んでいることがわかります。
なぜここまで中小企業でDXが進まないのか、それには理由があります。
ここでは中小企業のDXが進まない4つの理由を紹介します。
もっとも中小企業のDXが進まない理由は人材不足です。単純な人手不足ではなく、社内全体を俯瞰して、どのようにDXに取り組むかを理論的に考えられる人材が、やはり足りていません。
しかし、ITに強い人材を新しく雇う余裕がない場合があります。またITについて知識があるエンジニアがいても、業務が増えることで負担になることを懸念し、DXを断念することもあります。
まずはDXに知見のある外部人材に相談し、現状把握を行うのが第一歩です。同時に、ITに強い人材を増やすために、研修やセミナーへの受講を推進するのもいいでしょう。
DXを進めるためには、AIを活用した様々なツールや、ネット上のサービスを導入する必要があります。システムを導入する予算を確保できず、コストの問題でDXを断念する中小企業が多いです。
中小企業であれば、DXの導入コストは500万円から1000万円ほどが見込まれます。DX推進にはIT導入補助金や事業再構築補助金が使えるので、これらの申請も視野に入れれば直接的な負担は減らすことができます。
DXのことをよく知らず、どんな効果があるのかイメージできていなければ、DXを進めようと思わないでしょう。
DXを進めることで、業務効率化や顧客関係構築が期待でき、徐々に効果を実感することがあります。しかしすぐに具体的な効果がわからないため、DXを進めることを躊躇する方が多いです。
DXの効果がわからない人に対しては、効果を具体的にわかる事例を交えて伝えることが必要です。また、現在社内で起こっている具体的な課題や問題点にも焦点を当て、DXによって得られる利益を示すことが効果的です。
経営者ひとりがどれだけやる気になっていても、他の経営陣や現場の責任者がDXについて詳しく知らないと、DXは実現しません。中小企業だからといって必要性を感じないと考えてしまう可能性もあります。
またDXを進めることで、組織内に混乱が生じることを恐れていることもあります。実際に正しい手順を踏まずいきなりシステムを導入すると、業務プロセスや組織文化の変化を伴うため、抵抗や混乱が生じることがあります。
DXが進めば必然的に経営への効果があります。ここではDXによる経営への効果を紹介します。
ぜひ、参考にしてみてください。
DXを進めれば、業務プロセスの自動化や効率化が可能となります。これによって作業時間の削減や生産性の向上が期待できます。
例 | DX後イメージ |
従業員の経費精算 | 紙の領収書を提出し、手動で経費の計算や承認プロセスが行われる。 ↓ デジタル化によりスマートフォンアプリからデータを送信し、自動で精算が行われ、承認プロセスも効率的に進む。 |
在庫管理 | 定期的な在庫点検が必要で、過不足が発生していた。 ↓ センサーやIoTデバイスを用いたリアルタイムの在庫モニタリングにより、適切なタイミングで発注や再補充が可能になり、在庫のムダが減少。 |
プロジェクト管理 | プロジェクトの進捗管理や文書のやり取りをメールやファイル共有に頼っていた。 ↓ クラウドベースのプロジェクト管理ツールを導入することで、リアルタイムでの進捗確認やチーム全体での効率的なコラボレーションが可能。 |
カスタマーサポート | 人手での問い合わせ応対がメイン。 ↓ 自然言語処理を活用したAIチャットボットにより、基本的な問い合わせに迅速かつ正確に応対。人は本格的なサポートに専念できる。 |
営業活動 | 事務所での業務がメイン。 ↓ モバイルデバイスやクラウドサービスを活用したモバイルワークが可能になり、営業担当者は外出先でも顧客情報へアクセスし、契約処理や報告書作成が効率的に行える。 |
これらの具体例から分かるように、DXによって業務プロセスが自動化され、リアルタイムな情報が利用可能になることで、従業員はより迅速に作業を進め、生産性が向上します。これにより、企業は効率的に運営され、市場での競争力を強化することが期待されます。
社内のデータが一か所に集約されれば、実施した営業戦略やマーケティング戦略の効果検証・分析がスムーズにできるようになります。これにより、これまでのデータをもとにした新しい事業やサービスの計画が進められます。
既存のアナログ業務をデジタル化することで、業務を効率化できるのは、もうおわかりでしょう。業務プロセスの改善ができれば、残業時間の削減や業務負担の軽減ができます。
テレワークも可能になるので、働き方の多様化が実現できます。ビデオ会議、共有ドキュメント、チャットなどを活用して、メンバーは異なる場所からでもリアルタイムで情報を共有し、連携してプロジェクトを進めることができます。社員の満足度やモチベーションの向上にもつながるでしょう。
DXを進めれば「2025年の崖」といわれる、レガシーシステムの利用による経済損失を回避できるという効果があります。レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築されているシステムです。いわゆる”時代遅れ”のシステムです。
1980年代には多くの企業が、当時最新だったシステムを導入しています。しかし古くに導入したシステムは往々にして古い技術やアーキテクチャに基づいており、これにより新しいテクノロジーやビジネスモデルへの迅速な適応が難しいとされます。2025年の崖において、急速なテクノロジーの進化に追いつけないリスクがあるため、企業はこれに対応する必要があります。
また、古いセキュリティ規格やコンプライアンス基準に基づいて構築されていることがあり、これが2025年以降の新しいセキュリティ課題や法規制への適合を難しくする可能性があります。
企業が2025年の崖に対応するためには、レガシーシステムからの脱却が重要とされることがあります。DXを推進することで、企業は変化に適応し、競争力を維持・強化することが期待されます。
単純に予算に合うシステムを選んで導入するだけでは、上手くDXは進みません。DXを進めるのにはやり方があります。そこでここでは中小企業のDXの進め方6ステップを紹介します。
中小企業がDXを進めるには、まずは自社の課題とビジョンを明確にする必要があります。業務における課題や、企業の成長を妨げている要因を把握しましょう。従業員、管理職、IT部門など、関連する部門にヒアリングを行い、業務プロセスを分析します。
そしてDXによってなにを達成したいのか、組織全体が共有できるよう、ビジョンを明確にします。現状とビジョンとのギャップを特定し、どの領域で変革が必要で、どのような取り組みがギャップを埋めるのかを検討します。
特定されたビジョンや課題に対して、効果と緊急性を明確にし、優先順位をつけましょう。
DXを進めるにはITに関する専門的な知識を持つ人材やプロジェクト管理ができる人材が必要です。たとえば、次のような経験がある人材を確保しましょう。
採用がうまくいかないときは、ITコンサルタントへの依頼を検討するといいでしょう。
DXを進めるには、ツールの選定が重要です。機能が複雑で扱いにくいツールを選んでしまうと、うまくDXを進められません。
そのため、初心者でも使いやすいツールを選んでテスト導入しましょう。ほとんどのシステムで、トライアルやテスト利用が可能です。効果を検証しながらDXを進めていくといいでしょう。
導入したツールにテスト的にデータを収集して、ツール導入前の状態と一致しているか確認しましょう。その際にツールの運用ルールを決め、実際に運用してみることも重要です。
全社的に導入する前に、一部の部門で運用して従業員の意見を聞きながら、より運用しやすいルールにしていくといいでしょう。
次に業務プロセスや組織を変えていきます。既存の業務を見直し、どのようなステップや手順が含まれているかを文書化します。
可視化された業務プロセスから、効率性の低いポイントや改善の余地がある部分を特定します。時間のかかる手順、冗長な作業、エラーが発生しやすい箇所などがシステム代替しやすいため、重点的に見ていきましょう。
システムの導入に伴い、新しいワークフローを設計します。従来の手順とは異なる可能性があり、変更される業務プロセスに関する従業員へのトレーニングを実施し、変化への理解と受け入れを促進します。
変更された業務プロセスのパフォーマンスを定期的にモニタリングし、必要に応じて改善も行いましょう。データ分析やフィードバックを活用して効果を評価することが、持続的な改善に繋がります。
DXは社内の効率化だけでなく、ユーザーや顧客にも良い影響を与えます。顧客により良いサービスを提供できるようになれば、顧客の意見を集めて商品やサービスの改善に活かせるでしょう。
対社外的にできるDXの取り組みは実はこれほど多様です。
DXは大企業だけ実行すればいいと思われがちですが、中小企業ほどDXを進める必要があります。業務効率や生産性の向上が期待でき、それにより新規事業や新しいサービスを開発しやすくなるでしょう。
業務マニュアルや契約の電子化のような小さなことからでもDXを進められます。ぜひ、DX推進を検討してみてください。